インフルエンザ脳症の治療や治療薬、診断基準と後遺症の確率をガイドラインに沿って教えます

子供がインフルエンザにかかってしまったら、最もおそろしいのがインフルエンザ脳症です。
「インフルエンザ脳症」という言葉はしっているけれど、どんな症状がでるのか知りたいという方はこちらを参考にしてくださいね。
今回は、インフルエンザ脳症の治療法や診断基準についてご紹介します。

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インフルエンザ脳症の治療や治療薬は?治療ガイドラインに沿って教えます

残念ながらインフルエンザ脳症には特効薬といわれるものは見つかっておらず、対症療法しかありません。

(1)支持療法(人工呼吸・循環の管理・ショック対策・抗けいれん薬・積極的解熱など)
(2)特異的療法(タミフル・ステロイドパルス療法・ガンマグロブリン大量療法)
(3)特殊治療(低体温療法・血漿交換療法・シクロスポリン療法・アンチトロンビンⅢ大量療法・脳保護剤など)

支持療法は、いわゆる全身の状態をできるだけいい状態にキープしてあげるという目的で行います。
全身状態が悪いとインフルエンザウイルスと戦う体力や抵抗力が失われてしまいます。
インフルエンザに対する支持療法で脳症への進展が阻止できるかは不明ですが、後述の特異的治療には明確なエビデンスを持つものが少なく、支持療法をインフルエンザ脳症と診断されない段階から積極的に行うことが重要です。

インフルエンザ脳症では、支持療法に加え、不可逆的な脳損傷が進行しない早期に特異的療法を開始することが有用と考えられています。

抗インフルエンザウイルス薬をまず投薬します。
タミフルを使う理由は、意識がない場合には吸入であるリレンザやイナビルは使用することができないからです。
最近では、ラピアクタの点滴という方法もあります。

また、ステロイドパルス療法は大量のステロイドを点滴します。
中枢神経系内の高サイトカイン状態や高サイトカイン血症の抑制に有効と考えられています。サイトカインはインフルエンザなどのときに病気と戦ってくれる物質なのですが、インフルエンザ脳症の時には働きが過剰になってしまっています。それを抑制してくれるということです。
さらに、脳浮腫を軽減する効果もあるので脳のダメージを減らすことができます。
ガンマグロブリン大量療法も高サイトカイン血症に有効と考えられています。

特殊治療は支持療法と特異的療法を十分に行った上で、それでもまだ不十分という場合に行われます。
まだ、脳症に対する治療効果についての十分なエビデンスは得られておらず、「効果が期待できるかも」くらいの治療となります。

低体温療法:脳のダメージ拡大を阻止。充分なエビデンスはまだない。
血漿交換療法:サイトカインの除去。
シクロスポリン療法:アポトーシス抑制。
アンチトロンビンⅢ大量療法:DIC対策。
脳保護剤(フリーラジカル消去剤):脳の酸化ストレスによる脳障害を軽減する。

ちょっと難しいですが、補助的に行う治療だということを覚えておいてもらえれば大丈夫です。

インフルエンザ脳症の診断基準 治療ガイドラインに沿って教えます

病院に行ったときに、先生が診察をして、インフルエンザの診断となり、さらにインフルエンザ脳症の可能性があると判断した場合には、たいていの場合CTやMRIを撮ります。
もしも、CTなどの設備がないクリニックなどの場合には、すぐに大きな病院へ搬送されると思います。

そして、検査の結果以下に示した神経所見・検査所見が認められた場合、インフルエンザ脳症と診断し、特異的治療の開始を考慮するということがインフルエンザ脳症のガイドラインで決まっています。

1)神経所見 確定例 ・ JCS 20 以上(GCS 10〜11 以下)の意識障害
原則として、上記は数時間で回復傾向を示すが、脳症の意識障害は不変か増悪する。
2)頭部 CT 検査 確定例 ・ びまん性低吸収域(全脳、大脳皮質全域) ・ 皮髄境界不鮮明 ・ 脳表クモ膜下腔・脳室の明らかな狭小化 ・ 局所性低吸収域(両側視床、一側大脳半球など) ・ 脳幹浮腫(脳幹周囲の脳槽の狭小化)

難しくてよくわかんないですよね。
簡単に書くと、意識障害などの神経の異常があるか、CTの結果、インフルエンザ脳症の時に見られる脳の異常の所見が認められるかということに注目して診断をするということになります。

もしも、インフルエンザ脳症の診断がついた場合には、特異的治療を開始します。
施設によってはさらに、治療が可能な二次または三次医療機関へ搬送されることがあるかもしれません。

そこで、さらに詳しい検査やガイドラインに沿った治療が行われることになります。


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インフルエンザ脳症 後遺症の確率

インフルエンザ脳症はガイドラインの制定によって少しずつ改善されています。
死亡率が30%とかなり高い時期もありましたが現在は8%ほどまで低下しています。
これは治療方法がガイドラインにて示されたことが大きいといえるでしょう。
ただ、それでも死亡率8%は、わが子がインフルエンザ脳症にかかったと考えたら、かなり恐ろしい数字です(´;ω;`)
さらに、後遺症が残る確率も25%あります。
後遺症の内容としては、神経に関わるものが多く運動麻痺をはじめ、視覚や聴覚への障害、飲み込みなどに関係する嚥下障害などの体の機能に関するものがあります。
また、知能低下やてんかんなど精神にも障害が起きることもわかっています。
後遺症はリハビリで改善はしますが、完治はしません。
そして、後遺症が残った場合には長期の療養やリハビリが必要になります。

一生の障害を背負うことになりますので、やはり、早期の発見・治療が大切であるということが言えます。

まとめ

インフルエンザ脳症の診断は
意識障害などの神経の異常があるか、インフルエンザ脳症の時に見られる脳の異常の所見が認められるか。

治療は
(1)支持療法(人工呼吸・循環の管理・ショック対策・抗けいれん薬・積極的解熱など)
(2)特異的療法(タミフル・ステロイドパルス療法・ガンマグロブリン大量療法)
(3)特殊治療(低体温療法・血漿交換療法・シクロスポリン療法・アンチトロンビンⅢ大量療法・脳保護剤など)

死亡率は8%、後遺症は25%の確率で起こる。
ということでした。

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